ECO家の一族 クローバーワールドの片隅に生きる、とある一族のお話。
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想いは調べにのせて

ブールカルト 乾杯王の広場近く 「雨宿り」亭――








クラファー:悪いが、まだ――ああ、お嬢さん。


ミハエル・クラファー Michael Crafer
「雨宿り」亭の店主。
 30歳。








ヒルデ:いいですか。


ヒルデ・ノヴァリス Hilde Novalis
 貴人位階第一位の名家ノヴァリス家の令嬢。
 奇跡の力「魔導」を操り、その頭髪の色彩から「金色の神子」の異名を持つ魔導師。
 21歳。


クラファー:どうぞ。仕込みの途中ですので、大したものはお出し出来ませんが。


ヒルデ:構いません。一杯いただいたら帰りますから。


クラファー:わかりました。













クラファー:しばらくお顔を拝見していませんでした。


ヒルデ:ええ。セイル様に呼ばれてリューリ湖に行っていました。


クラファー:「湖の処女」に……?


ヒルデ:はい。……フフ。


クラファー:どうされました。


ヒルデ:セイル様から、小芝居に付き合え、と頼まれたのですよ。


クラファー:小芝居、ですか。



ヒルデ:「一〇〇〇年紀の終末」は、ご存じですか。


クラファー:ええ。そろそろ、のはずでしたか。少しずつ街もざわつき始めてますが。


ヒルデ:終わりました。


クラファー:この間、エフライームに「導師」一行が現れたとか――終わっ、た?


ヒルデ:はい。もう終わったそうです。


クラファー:それは、いい意味で終わった、という事で?


ヒルデ:はい。


クラファー:なんと……。


ヒルデ:結局、「導師」に従う「三星」も揃う事はなかったそうですよ。


クラファー:……それで三魔神は退けられたんですか?



ヒルデ:はい。ミサト様の英邁なるお働きによって――セイル様はそうおっしゃっていました。


クラファー:ミサト様といわれるのが「導師」様で……?


ヒルデ:はい。


クラファー:なるほど……。


ヒルデ:ただ、あまりに淡々と終わりすぎたので面白くないから、セイル様が脚色して叙情詩にするそうです。


クラファー:……は?


ヒルデ:この世界の津々浦々に知れ渡るように、と。力こぶを入れていらっしゃいました。


クラファー:ふむ……。


ヒルデ:揃わなかった「三星」の最後のひとりの役を、私に振ってくださるそうですよ。



クラファー:な……! いや、確かにあなたなら、その資格は十分かと思いますが……。「導師」や、他の「三星」はなんと?


ヒルデ:……全員、亡くなられたそうです。


クラファー:そうでしたか……。


ヒルデ:ミサト様たちの物語を風化させたくない、というセイル様のお考えです。


クラファー:わかりました。しかし、そうなると、よく受けられましたな。とびきりの虚名を博することになりましょうに。


ヒルデ:そうなるでしょうね。


クラファー:承知の上、と。


ヒルデ:……この喜劇に、私も一枚噛んでみたくなったのですよ。


クラファー:喜劇、ですか……。確かに、そうかもしれません。













ヒルデ:やがてこの街にも旅の楽師たちが訪れるでしょう。その時は、クラファー殿も、どうぞご覧になって。












…………。


…………。


…………。












 お目にかかりたかった。


 ミサト・サイトウ様――












 後は、私にお任せください。


「三星」最後のひとり、立派に演じましょう。













幾星霜を経て、この小芝居が伝説となるのです。

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