ECO家の一族 クローバーワールドの片隅に生きる、とある一族のお話。
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Man and Woman

Sky and Land Black and White Dream and Real


Right and left Lie and Truth Night and Day


小鉄:はじめてのーみせでーいつものーさーけーニャー。


リューガ:いらっしゃい……。


小鉄:ウニャー……?


リューガ:道化……まだ存在していたのか。


小鉄:これはこれは、しばらくぶりの再会というのに、ご挨拶ニャ。お生憎様で、ニャーは健在ですニャ。


リューガ:……なんの用だ。


小鉄:酒場に風呂に入るに来るヤツはいないニャ。変な勘繰りはやめて欲しいんだけど、キミがここにいることは全然知らなかったニャ。


リューガ:…………。



小鉄:それに、もうキミには用はないニャ。キミよりもっと、ずっと、可能性のある子を見つけたニャ。


リューガ:何……?


小鉄:とりあえず、帰るニャ。ここのご飯は美味しい、って姉様に聞いていたのに残念ニャ。けど、こんな殺気立った人がいたんじゃ、美味しいものも美味しく感じられないニャ。


リューガ:……姉様、と言ったか。誰のことだ。


小鉄:キミには関係ないニャ。


リューガ:…………。


小鉄:では、さよならニャ。お互いのために、二度と会わないことを祈っているニャ。













リューガ:…………。













リューガ:邪魔をする。


サイユ:あいよ。ああ、師父さんかよ。


リューガ:サイユ、ル・ティシェはいるか。


サイユ:出てるよ。伝言があるなら聞いておくよ。


リューガ:……いや。サイユ、聞くのだが、ル・ティシェは最近、妙な……。


サイユ:妙な?


リューガ:博識なお前のことだ、姿形ぐらいは知っているとは思うが、妙な「猫」を側に置いてはいないか。


サイユ:猫って呼んだら機嫌を悪くする「猫」ならいるよ。


リューガ:……ケット・シー、か。


サイユ:その通りだよ。













リューガ:……やはり伝言を頼もう。戻ったら店まで来て欲しい、と伝えてくれるか。













ル・ティシェ:師父が……。


サイユ:ニャンコ先生のことを知っているみたいだったけど。


ル・ティシェ:小鉄を、か。


サイユ:あまりいい話じゃないような感じがしたけどよ。


ル・ティシェ:…………。













小鉄:やっぱりーニャーはーぁーぁーきくまーさーむーねーニャー。


サイユ:ニャンコ先生、ご機嫌だよ。


小鉄:ちょっとはしごしてましたニャ。


ル・ティシェ:小鉄。


小鉄:ウニャ?


ル・ティシェ:お前、リューガという男を知っているか。



小鉄:ウニャー。知っておりますニャ。もしかして姉様たちの知り合いでしたかニャ。


ル・ティシェ:私の師父だ。


小鉄:ニャンと……。なんとも運命的な、と言いたいところだけど、ニャーにとってはあまりいい展開ではないようですニャ。


サイユ:ニャンコ先生は師父さんと過去に何かあったのかよ。


小鉄:ありましたニャ。ウニャー、そういえば姉様はあの店の共同経営者でしたっけかニャ。うっかり口を滑らせたばっかりに、面倒なことになりそうニャ。


ル・ティシェ:小鉄、お前はいったい……。













小鉄:姉様、まずは彼の話を聞いてきて欲しいニャ。それからニャーの話を聞いて下さいですニャ。












…………。


…………。


…………。













ル・ティシェ:師父、参上しました。


リューガ:呼び立ててすまんな。


ル・ティシェ:いえ。師父、小鉄が何か。


リューガ:小鉄……?


ル・ティシェ:うちにいるケット・シーのことです。


リューガ:そういえば、ヤツの名は知らなかったな。


ル・ティシェ:私が強引につけた名前ですので、本名は知りません。


リューガ:……ヤツから話は聞いたか。


ル・ティシェ:いえ。まずは師父の話を聞いてこい、と。その後で、自分の話を聞いて欲しい、と。













リューガ:……ヤツは、お前を「英雄」にしてやろう、と言うだろう。


ル・ティシェ:英雄……。


リューガ:聞く耳を持つな。無視しろ。


ル・ティシェ:……英雄とは、いったいなんですか。漠然とし過ぎていて、全く意味がわかりませんが。


リューガ:そのままだ。人を超えた力を持つ存在、そこに行き着くための手ほどきをしよう、と。


ル・ティシェ:…………。


リューガ:まやかしだ。そんな話、あるはずがない、というのはお前ならわかるだろう。


ル・ティシェ:…………。













リューガ:いいか、無視するんだ。そして、ヤツとは早々に縁を切れ。いいな!












…………。


…………。


…………。













サイユ:ニャンコ先生。


小鉄:ウニャ?


サイユ:聞いてもいいかよ。ニャンコ先生と師父さんの関係を、よ。


小鉄:構いませんニャ。彼はニャーが2番目にプロデュースしたニンゲンですニャ。


サイユ:プロデュース?


小鉄:サイユさんは、確か、SENSというデータベースの管理者でしたニャ。


サイユ:SENSは勝手に情報を収集してくるから、私が管理してるわけじゃないけど、一応、アクセス権は持っているよ。


小鉄:そこに「AVANCER」という言葉についてのデータはありませんかニャ?


サイユ:アヴァンサー……いや、ないみたいだよ。


小鉄:ニャッ。SENSに知られてないとは、我らがエンシェントアークのプロテクトもなかなかのものですニャ。



サイユ:エンシェントアーク……! ニャンコ先生、それはあらゆる次元の、あらゆる事象の過去、現在、未来を書として収めてある図書館のことかよ!


小鉄:その通りですニャ。さすがにエンシェントアークの存在はご存じでしたニャ。


サイユ:情報に生きる者として、エンシェントアークを知らないのはもぐりだよ。


小鉄:ウニャー。まさしく、ですニャ。で、アヴァンサーというのは、エンシェントアークに貯蔵されている秘中の秘、転生の書を読み解いたニンゲンが行き着く「頂」の存在のことですニャ。


サイユ:頂……? 師父さんは、その「頂」なのかよ?













小鉄:ニャ。彼はアヴァンサーですニャ。












…………。


…………。


…………。













ル・ティシェ:お断りします。


リューガ:ル・ティシェ!


ル・ティシェ:ご自分なら、こんな風に頭ごなしにものを言われ、わかりました、と従う気になりますか。


リューガ:…………。


ル・ティシェ:自分に出来ないことを、他人に押しつけるのは止していただきましょう。


リューガ:…………。


ル・ティシェ:今の師父は感情に囚われ、全く整然とされていない。小鉄となにやら因縁があるようですが、私を巻き込まないで欲しい。


リューガ:…………。


ル・ティシェ:小鉄が私に何を話すのか、それはまだわかりませんが、自分のことは自分で決めます。ご意見無用。













リューガ:……それはお前の答えか。


ル・ティシェ:そうです。


リューガ:……お前が「英雄」になると言うのなら、俺は全力で止める。


ル・ティシェ:それそのような、まだ、なる、とも、ならない、とも決めていない私に対しての、物言い。今の師父とはまともな議論は出来ないようです。


リューガ:…………。













ル・ティシェ:失礼する。












…………。


…………。


…………。













ル・ティシェ:戻った。


サイユ:おかえり。


ル・ティシェ:……小鉄、お前の話を聞こう。


小鉄:ウニャー。その前に、彼は何か言ってましたかニャ?


ル・ティシェ:お前は、私を英雄にする、と持ちかけてくるそうだ。


小鉄:ニャー。


ル・ティシェ:それを断れ、と言われた。


小鉄:姉様はなんと?


ル・ティシェ:私は、相手が誰であろうと頭ごなしに指図されるのは好かん。私のことは私が決める。



小鉄:了解ですニャ。……まず、最初に断っておきますけど、ニャーは姉様を英雄にする、とは言いませんニャ。


ル・ティシェ:…………。


小鉄:正直に言えば、彼にはそういった甘言を弄したことは事実ですニャ。ニャーが最初にプロデュースしたニンゲンにも、似たようなことを言いましたニャ。


ル・ティシェ:…………。


小鉄:でも、それでは駄目だと気付きましたニャ。だから、姉様にはありのままを話しますニャ。


ル・ティシェ:聞こう。


小鉄:彼が「英雄」と言ったのは、正確には「AVANCER」……アヴァンサーのことですニャ。


ル・ティシェ:なんだ、それは。


小鉄:普通のニンゲンの限界が、例えば、歩数にして5歩、としますニャ。アヴァンサーは5歩を超えて6歩、7歩ぐらいまで行けるニンゲンのことですニャ。


ル・ティシェ:ふむ。













小鉄:姉様。姉様は、この木を飛び越えられますかニャ?


ル・ティシェ:……さすがに無理だ。


小鉄:アヴァンサーになれば、飛び越えられますニャ。それを、凄い、と思いますかニャ?


ル・ティシェ:凄い、と言えば、凄い、のだろうな。


小鉄:淡泊な反応ですニャ。


ル・ティシェ:お前の言葉を借りるなら、「普通のニンゲン」との比較では、確かに凄い。だが……。


小鉄:ニャ……?



ル・ティシェ:どれだけ高く飛べても、太陽には届かない。


小鉄:ニャッ! ニャ、ニャ、そ、その通りですニャッ! ニャーの言いたかったことを、ズバリ言ってくれましたニャ!


サイユ:ニンゲンの中では相対的に優れていても、この広大な天地の中にあっては、さしたる存在ではない、ということらしいよ。


小鉄:そうですニャ。アヴァンサーは、「ちょっとだけいけてるニンゲン」程度でしかありませんニャ。でも、それをニャーは2人に正確に伝えなかったのですニャ。


ル・ティシェ:続けてくれ。


小鉄:ニャ。ニャーが最初にプロデュースしたニンゲンに、ニャーはあらん限りの美辞麗句でアヴァンサーを称えましたニャ。世界を変える力がある、とまで言ったものですニャ。


ル・ティシェ:…………。



小鉄:なにしろエンシェントアークから転生の書が発見されたばかりの頃で、アヴァンサーになったニンゲンをケット・シー族の誰も見たことがなかったのですニャ。見てみたかったのですニャ。転生の書に書かれていたことを鵜呑みにして、吹きまくったものですニャ。反省してますニャ。あ、エンシェントアークについては後で説明しますニャ。


ル・ティシェ:うむ。で、その、最初のニンゲンとやらは、どうなった。


小鉄:アヴァンサーの力を得た彼女は、その力を人々のために振るったのですニャ。もともと彼女は優れた統治者でしたニャ。そこにアヴァンサーの力が加わり、彼女は絶対的な存在として君臨しましたニャ。何もかもが上手くいっているように、ニャーには見えてましたニャ。


サイユ:…………。


小鉄:ある時、そんな彼女が、さらなる力を求めたのですニャ。


ル・ティシェ:…………。


小鉄:しかし、彼女は、その求めた力に飲み込まれ、彼の地の奥底に永遠に縛られる存在となってしまったのですニャ。


ル・ティシェ:彼の地、とは。


小鉄:わかりませんニャ。エンシェントアークにも記録のない、遠く、深いところにある場所ですニャ。


ル・ティシェ:…………。













小鉄:ケット・シー族は彼女を助けようとしましたニャ。でも、ニャーたちにその力はありませんニャ。だから、またアヴァンサーを誕生させようと考えたのですニャ。


ル・ティシェ:それが師父か。


小鉄:ですニャ。ニャーは彼にもまた吹いてしまいましたニャ。反省してますニャ。その時のニャーは、まだ、物事の本質に気付いてなかったのですニャ。


ル・ティシェ:本質、とは、アヴァンサーの絶対的な力量についてか。


小鉄:そうですニャ。それともうひとつ、アヴァンサーになる者の持って生まれた性質ですニャ。


サイユ:…………。


小鉄:彼は素晴らしい能力の持ち主でしたニャ。能力という点から見れば、姉様よりも遙かに上ですニャ。


ル・ティシェ:そうだろう。


小鉄:でも、そんな彼をしても、彼女を救うことは出来なかったニャ。ウニャー。彼も結局、さらなる力を求め、その力を受け止めきれずに引き裂かれ、抜け殻のようになってしまったニャ。













小鉄:ニャーはずっと、ずっと考えましたニャ。何がいけなかったか、ずっと考えましたニャ。そして、気付いたんですニャ。ひとつは、アヴァンサーの力を正確に把握しないまま過大に伝えてしまい、結果として2人を失望させてしまったことニャ。そして、もうひとつは、2人がライフストリームの真ん中で生きるニンゲンだったことニャ。


サイユ:ニャンコ先生、前も言っていたけど、ライフストリームってなんだよ?












生命は、過去から来て、現在、そして未来へと流れていきますニャ。


今、サイユさんがこの世にあるのは、両親から受け継いだ生命の光があるからですニャ。


その光をサイユさんは、今度は自分が親として子へと託すのですニャ。


サイユさんの子供も、いつか親になって、サイユさんと同じように生命の光を自分の子供に託しますニャ。


絶え間なく続いていくこの流れを、ライフストリームと言いますニャ。


……ライフストリームの中に生きるものは、全て、生命の光のリレーとの関わりからは逃れられませんニャ。


生命の光のリレーとの関わりとは、言い換えれば「愛」ですニャ。


彼女は、彼女が統治する全ての人々のライフストリームを守ろうとして、それにはアヴァンサーの能力では足りないことに煩悶し、さらなる力を求めたんだと思いますニャ。


そして、彼は、彼女をライフストリームの中に呼び戻すべく力を尽くし、それにはアヴァンサーの能力では足りないことに煩悶し、さらなる力を求めたんだと思いますニャ。


2人を突き動かしたのは、それぞれの「愛」故ですニャ。


しかも、2人はライフストリームの真ん中に生きるニンゲンだったニャ。


その「愛」は、とても強かったニャ。


強すぎたニャ。


だから、「愛」に囚われてしまったニャ。












小鉄:長くなりましたニャ。ニャーは探していましたニャ。ライフストリームの外にあって、「愛」に囚われない自在の心を持つニンゲンを、ずっと探していましたニャ。そのニンゲンこそ、アヴァンサーの力を託せるニンゲンニャ! ニャーたちの願いを叶えてくれるニンゲンニャ!


ル・ティシェ:……それが私か。


小鉄:ニャッ!













随分と買われたものだ。












…………。


…………。


…………。













ル・ティシェ:…………。


サイユ:どうしたんだよ、姉さん


ル・ティシェ:ああ。小鉄に言われたことを考えていた。


サイユ:「愛」に囚われない、ってヤツかよ?


ル・ティシェ:うむ。全く、はっきり言ってくれる。要は、醒めた人でなし、ということだろう。


サイユ:気にしてたのかよ。


ル・ティシェ:多少な。



サイユ:私の解釈は違うよ。


ル・ティシェ:どう違う。


サイユ:例えば、私に何か生命の危機みたいなのが訪れたとして、その時、姉さんは私のために命を懸けた無茶をしてくれると思うんだよ。


ル・ティシェ:さて……。


サイユ:逆に、姉さんに何か生命の危機みたいなのが訪れたなら、私は姉さんのために命を懸けて無茶をするよ。でも、それは当たり前のことなんだよ。姉さんと私は、血の繋がりはなくても、家族同然の、近しい関係なんだからよ。


ル・ティシェ:…………。


サイユ:ここで考えてみるよ。統治者って、ニャンコ先生は言っていたかよ。おそらく女王ヴェルデガルドのことだと思うんだけど、あの人が自らの国民のために生命を張ったり、師父さんが女王を救うために、これまた命を張ったりするのは、当たり前のことかよ?


ル・ティシェ:……それぞれの立場からすれば、当たり前、なんだろう。



サイユ:言い方を変えるよ。普通の人間が、縁もゆかりもない相手のため、そこまでするか、ってことだよ。私ならしないよ。


ル・ティシェ:……私も、しないな。


サイユ:ライフストリームの真ん中で生きるっていうのは、この世界の理を体現して生きる、ってことなんだと思うよ。口の悪い言い方をすれば、女王ヴェルデガルドも師父さんも勇者気質なんだよ。


ル・ティシェ:非常にわかりやすいたとえだな。


サイユ:ニャンコ先生は、「愛」に囚われない、なんて難しいことを言っていたけど、結局は、普通の人を求めていた、ってことなんじゃないかよ。なにかのために、って気持ちの強すぎる人は、その「なにか」のために足を踏み外すことが、おうおうにしてあるものだよ。


ル・ティシェ:要約しすぎな気もするが。普通の人なら、別に私である必要もなかろう。


サイユ:アヴァンサーに相応しい基本的な能力を持っている、っていうのはもちろんだろうけど、後は、師父さんみたいな「囚われ」方はしない、っていうのも大きかったのかもしれないよ。


ル・ティシェ:どういう意味だ。













サイユ:ニャンコ先生に言われるまで気付かなかったんだけど、姉さんは、その一点においては、確かにライフストリームの外側にいる、ってことだよ。


ル・ティシェ:…………。


サイユ:…………。


ル・ティシェ:……自覚したのはだいぶ前だが、別に誰に迷惑をかけるわけでもなし。私も困っていない。


サイユ:実は、姉さんは黒ちゃんに気があると思ってたよ。


ル・ティシェ:あれはいいヤツだが、それだけだ。それ以外の感情は沸かんな。


サイユ:余談だったよ。


ル・ティシェ:お前だから話した。他には言ってくれるなよ。私にとってはノーマルだが、世間的には、そうではないだろうからな。


サイユ:あいよ。


ル・ティシェ:もうすぐノーザンプロムナードか。













…………。












…………。


…………。


…………。













小鉄:ウニャー……。やっぱり来たのかニャ。













リューガ:…………。


小鉄:キミの力は、あの時、失われてしまったのニャ。もう、キミには彼女を助けることなんて出来ないニャ。そのことはキミ自身が一番わかっているはずニャ。


リューガ:それでも、俺は、諦めてはいない。


小鉄:…………。


リューガ:それに、だ。あの時の俺に出来なかったことが、ル・ティシェに出来るとは思えん。あの娘は俺の弟子だ。その弟子の命を危険にさらすわけにはいかん。


小鉄:それは思い上がりニャ。確かに、あの時のキミはもちろん、今のキミにすら姉様は劣っているニャ。でも、姉様にはライフストリームの外にある、という強みがあるニャ。キミと、そしてヴェルデガルドが逃れられなかった頸木も、姉様の自在の心は、きっとものともしないニャ。


リューガ:わけのわからんことを……!













ル・ティシェ:小鉄、人を呼びつけておいて出迎えはなしか。


小鉄:ウニャッ、姉様。申し訳ないですニャ。実に悪いタイミングで彼が来たニャ。


ル・ティシェ:……師父。


リューガ:ここに来た、ということは転生の書を紐解きに来た、ということか。


ル・ティシェ:そこまではまだ決めていませんが。


リューガ:では、何故来た。


ル・ティシェ:小鉄からだいたいのことは聞きました。ですが、もう少し詳しく、自分の眼でいろいろと確かめねば、安請け合いできる類の話ではありません。


リューガ:確かめ終わったら、アヴァンサーになるか。


ル・ティシェ:さて……。












笑ってくれて結構だ。俺は、女王ヴェルデガルドと、ただの一度も言葉を交わしたことはない。


ただ、儚げに俯く絵の中の彼女を、この道化から見せられただけだ。


それだけだ。


それだけのことで、俺は人を捨て、アヴァンサーになった。


彼女を救い出すには、彼の地への扉を開かねばならない。


だが、アヴァンサーの力はそのことに対して全く無力だった。


俺はさらなる力を求めた。


彼の地に蠢く禁じられた力を召喚し、俺のものとする。


こちらから彼の地へ向かうのは、極めて困難だ。


だが、彼の地の力を召喚し、それを屈服させることが出来れば、主として行き来は自在となる。


俺はそれに賭けた。


……結果は、知っての通り、上手くいかなかった。


俺は呼び出した力を御することが出来ず、暴発させ、全ての能力を失った。


力に弾かれ、吹き飛ばされた、その一瞬に俺は見たのだ。


俺が呼び出し、そして、俺を吹き飛ばした力、それを振るっていたのは、禍々しきものと同化した彼女だった……。


戦って勝てる相手でもないだろう。


また、勝ったとしても、それはすなわち、彼女もろとも打ち倒すことになる……。


だが、俺は諦めてはいない!


たとえ、全て失っていても、俺はまだ諦めてはいないんだ!













やらせん、やらせはせんぞ、ル・ティシェ!












ル・ティシェ:……わかりました。













やめましょう。












リューガ:な……に……。


小鉄:ニャッ!


ル・ティシェ:師父がそこまで入れ込んでいることに、無関係の私が立ち入れるはずもありません。


リューガ:……限界があるとはいえ、人を超える力。それを簡単に諦める、と言うのか?


ル・ティシェ:もともとそれほど興味があったわけでもなし。師父の不興を買ってまで、成すべきことではないでしょう。


小鉄:ね、姉様……。


ル・ティシェ:小鉄、お前から聞いた話は全て忘れる。他を当たれ。













ル・ティシェ:サイユ、帰るぞ。












…………。


…………。


…………。













リューガ:……道化。


小鉄:なんニャ。


リューガ:あれが、お前の言っていた、自在の心、か。


小鉄:……ちょっと、自在過ぎたニャ。でも、それでも、キミよりは、可能性があると思うニャ。


リューガ:…………。


小鉄:わかるニャ? 君の心はヴェルデガルドのことで一杯ニャ。焦っているニャ。余裕がないニャ。


リューガ:…………。


小鉄:……ヴェルデガルドもニャ。どうして、さらなる力を求めたニャ。彼女の統治は、完璧へと近付いていたはずニャ。だのに、何故、それ以上を求めたニャ。焦る必要はなかったはずニャ。


リューガ:…………。


小鉄:…………。


リューガ:……道化。


小鉄:なんニャ。


リューガ:ル・ティシェは、俺とは全く違う方法で、彼女への道を拓くかもしれない……。













今、そう思った。












「Man and Woman」 END


NEXT 「風のように 雲のように」


sooner or later,Thank you.

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この記事に対するコメント

英語(?)の訳がさっぱりわかりませんが
カッコイイ…!

シリアスな展開…ドキドキワクワク!
ティシェさんやっぱりカッコイイ…(´ω`)
ラクトキャスター | 2010/12/26 6:55 PM
ラクトキャスターさんへ

他のサイトはいざ知らず、当サイトにおきましては、意味のないことをさも意味があるようにしれっとかますこと、請け合いでs
というわけで、冒頭部の英語には全く意味がありません(
あ、これは本当。

ここまでいい加減だから、ここまで続いてきた、とも言えましょう。

いよいよ王道を歩き始めた感もある覆面。
果たしてこのまま突き進むか。
それともわらわらと加勢が入って、影が薄くなるか!(

乞うご期待です。

それでは!
ECO家 | 2010/12/27 5:39 PM
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