ECO家の一族 クローバーワールドの片隅に生きる、とある一族のお話。
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君住む街へ V

ファーライ邸 庭園――


ウィルバルト:ようこそ。神子様。

ヒルデ:ここで待っていれば会えるかと思いましてね。


ウィルバルト:おや。私に御用がおありで?


ヒルデ:ええ。


ウィルバルト:どのような?


ヒルデ:……先日、あなたの言っていた、仕方ない、の意味を、聞いてみたいと思いましてね。


ウィルバルト:…………。


ヒルデ:…………。








ウィルバルト:この家に跡継ぎを設けるために迎えられた男が、その役目を果たせなかったのですから。これは、そう、仕方ありますまい。


ヒルデ:…………。


ウィルバルト:…………。


ヒルデ:……カミル・ファンデルエストは知っていますか?


ウィルバルト:選帝侯付の魔導師ですね。


ヒルデ:あれが言っていたのです。御付きなんてやっていると、いろんな話が聞こえてくる、と。


ウィルバルト:…………。








ヒルデ:イズは、あなたの事は……?


ウィルバルト:あの様子では、まだ知らないのでしょう。あの子がここに顔を出す時の他には、話をする事もありませんので。


ヒルデ:今はまだ幼いあの子も、いずれ、気付くでしょうね。


ウィルバルト:ええ。それも仕方ありますまい。


ヒルデ:あなたは、イズの事を……?


ウィルバルト:愛しく思いますよ。


ヒルデ:血が、繋がっていなくても?








ウィルバルト:ええ。我ながら不思議にも感じますが、私にとって、それは大きな問題ではないようです。


ヒルデ:…………。


ウィルバルト:…………。


ヒルデ:わかりました。――おや、イズ。おいで。








イズベルガ:神子様! 突然、お帰りになったので、私、驚いてしまいました。


ヒルデ:それはごめんなさい。色々と、回る所もありましてね。


イズベルガ:はい。


ヒルデ:お父様のお手伝いですか?


イズベルガ:はい!








ヒルデ:うん。では、私も一緒にやりましょう。ファーライ夫君、指示を頼みますよ。












…………。


…………。


…………。













ヒルデ:これぐらいですか。


ウィルバルト:はい。おかげではかどりました。


ヒルデ:イズもよく頑張りましたね。


イズベルガ:はい!


ヒルデ:ファーライ夫君。冷たいものでも振る舞ってくれませんか。


ウィルバルト:離れではろくなおもてなしも出来ませんが、よろしいですか?


ヒルデ:明らかに不味なものでなければ、後は振る舞ってくれる相手次第ですよ。


ウィルバルト:はっ。それでは、こちらへ。








イズベルガ:はーい。












…………。


…………。


…………。












ファーライ邸 離れ――


ヒルデ:これは、美味しい……!


ウィルバルト:香草を煎じたお茶です。


ヒルデ:いいですね。初めての味ですが、さわやかで、実にいい。


イズベルガ:私、父上様の淹れてくださるお茶、大好きです。


ヒルデ:ええ。これは本当に美味しいです。リントヴルムにこんなお茶があったなんて。


ウィルバルト:このあたりでは珍しい香草を使っておりますので、他では飲めないかもしれません。


ヒルデ:うん。ファーライ夫君、ブールカルトへの土産にしたいのですが、少し分けて――。








乳母:やはり、こちらでしたか。お嬢様、こちらへは――。








無礼者!


乳母:!


イズベルガ:!


ウィルバルト:!


ヒルデ:主の夫君の居室に、おとないも告げずに押し入るとは、ファーライ家の家の者は礼節を知らぬか!?


乳母:う……。


ヒルデ:家の者のしつけも出来ぬとは、ファーライ夫人イステルも所詮は位階四位の木っ端か。フフ、フフフフフ。


乳母:…………。








ヒルデ:ファーライ夫人に告げよ。三星公が嘲笑していた、と。







 残され星のものがたり 第198話 「君住む街へ V」 終







「次回は7月3日(月)に更新予定です。

 またお目にかかりましょう。ごきげんよう」

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