ECO家の一族 クローバーワールドの片隅に生きる、とある一族のお話。
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君住む街へ I

サン・スーシ館――


ヒルデ:ただいま。

ユスティ:お帰りなさいませ。


ヒルデ:ユスティ。この家にシャッハ(チェス)の用意はありますか?


ユスティ:いえ、ございません。ご用意いたしましょうか?


ヒルデ:ええ。今日、伯父様に教えていただいたのですが、なかなか筋がいいそうですよ。ちょっと面白かったので、ここでもやってみようかと思いましてね。








ユスティ:承知しました。早速、手配いたします。












…………。


…………。


…………。












「さあ。始めましょう」

「はい。お手柔らかにお願いします」








ユスティ:…………(……これは)。


ヒルデ:どうしたのです、ユスティ?


ユスティ:しばし、お時間を。


ヒルデ:いいですよ。待ちますよ。







 結局、ユスティは思い付く限りの悪手を打ち続け、ヒルデを辛勝せしめたのだった。








ユスティ:…………(よかったのかしら……。もし、あの腕前のまま他で対局するような事があれば、お嬢様に恥をかかせる事になってしまうわ)。












…………。


…………。


…………。












「青濤」館――


ヒルデ:…………。


デジデリア:な、何よ。


ヒルデ:デジレ。愚妹。


デジデリア:誰が愚妹よ!


ヒルデ:率直に言いなさい。私の腕前はどうであったか。


デジデリア:ええ……?


ヒルデ:言いなさい。


デジデリア:…………。


ヒルデ:言いなさい。








デジデリア:――あー、もー! いいのね? 言うわよ? 下手。ものすごい下手。


ヒルデ:…………。


デジデリア:ここまで下手な人は初めてだわ!


ヒルデ:デジレ。


デジデリア:何。


ヒルデ:今、私と一局交えてみて、どうでした。


デジデリア:どう、って……?


ヒルデ:筋がいい、と思いましたか?


デジデリア:全然。


ヒルデ:では、私にそう言った者は、私を欺いた事になりますね。


デジデリア:あ、欺いた、って言い過ぎじゃないの? 気を遣ってくれた、ぐらいで……。








ヒルデ:欺いたのです。私を侮る者は、誰であろうと許しません。












…………。


…………。


…………。












サン・スーシ館――


ヒルデ:ユスティ。


ユスティ:お帰りなさいませ。お嬢様。


ヒルデ:デジレとシャッハをしてきたのですよ。


ユスティ:!


ヒルデ:ここまでの下手は初めて、と言われました。


ユスティ:それは……。


ヒルデ:その私に負けた。あなたはシャッハをやった事がなかったのですか?


ユスティ:は、はい。実は――。













ヒルデ:この虚言家! メルセデス・ソラに聞きましたよ。あなたは「七曜」でも一番強かったそうではないですか!


ユスティ:…………。


ヒルデ:伯父様といい、あなたといい、よくも私を欺いてくれましたね。


ユスティ:申し訳、ございません……。


ヒルデ:何が、筋がいい、か。何が、お時間を、か。二人とも、この下手くそに勝たせるには、どんな悪手を打てばいいか、とでも考えていたのでしょう!


ユスティ:…………。













ヒルデ:顔も見たくない!







 残され星のものがたり 第194話 「君住む街へ I」 終







「次回は6月19日(月)に更新予定となっています。

 月曜日、お待ちしています」

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