ECO家の一族 クローバーワールドの片隅に生きる、とある一族のお話。
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フレスラウ事変 I

「黄金領」 レーベヴォール建設予定地――


 この日、レーベヴォール建設予定地に「黄金領」へと赴任してきた全ての教者が集められた。








ドナウア:――そろったようだな。では、マルセル。


マルセル:はい――諸君、今日集まってもらったのは、当教区への寄進について皆に報告があるからだ。莫大な、と称してよい額の寄進がある。


ドナウア:皆、静粛に。








マルセル:フレスラウ、という街を知っているか。今回の寄進は、そのフレスラウを統治するフレスラウ候から――。








ラグンヒル:…………。


ディートリンデ:ラグンヒルさん?


ラグンヒル:……え、あ、はい。どうしました、ディート。


ディートリンデ:それは、こちらの台詞です。


ラグンヒル:私、ですか……? ああ、まあ……。


ディートリンデ:どうなさったのですか。








ラグンヒル:……ディートは、フレスラウという街の事はご存じか?


ディートリンデ:いいえ。どこにある街なのかも。


ラグンヒル:そうですか。実は、私も正確な場所はわからないのですが……。


ディートリンデ:?


ラグンヒル:そうですね。「彼」に聞いてみましょう。旅慣れた「彼」なら、知っているかもしれない。








ディートリンデ:は、はい。












…………。


…………。


…………。












「黄金領」 教者たちの宿泊施設――


ラグンヒル:シエルラ殿!


シエルラ:やあ、これはおそろいで。どうされましたか。


ラグンヒル:実は、あなたに聞きたい事がありまして。


シエルラ:なんでしょう。


ラグンヒル:旅慣れたあなたなら、知っているだろう、と思いまして。フレスラウ、という街をご存じか?


シエルラ:フレスラウ……? リントヴルムの近くですね。リントヴルムの北東、街道沿いの街ですが。


ラグンヒル:どのような街かは、ご存じか?








シエルラ:どのような、ですか……。領内に「燃える水」の湧く場所が見付かりましてね。最近、急速に豊かになってきた街ですね。


ラグンヒル:最近というのは、どれくらい?


シエルラ:ここ数十年でしょう。しかし、それが、何か?


ラグンヒル:…………。


ディートリンデ:ラグンヒルさん……?


ラグンヒル:シエルラ殿。レーベヴォールにフレスラウ候からの寄進があった事は……?


シエルラ:おや、そうなのですか。知りませんでした。まあ、下働きの私が知る必要も無い事ですし。








ラグンヒル:……素直に受けていいものだろうか。


シエルラ:何故、そのように?


ラグンヒル:……私は以前、ゴットシャルク選帝侯のお側に使えていた事があります。


シエルラ:おや。そうだったのですか。


ディートリンデ:……選帝……ま、まさか!


ラグンヒル:…………。


シエルラ:……そういう事ですか。これは、確かに、素直に受けていいものかどうか、悩ましいですね。


ラグンヒル:…………。


ディートリンデ:…………。








シエルラ:実は、私、ブールカルトにてノヴァリス嬢の知遇を受けていた事があります。


ディートリンデ:ヒルデ姉様の!?


シエルラ:あの方に災いを招くような事ならば、私としてもこのまま捨て置くわけにはいきません。何故といって、私はあの方に返さねばならない大恩があるからです。


ラグンヒル:どうします?


シエルラ:このようなきな臭い話にあの方を巻き込んではなりません。まずは、レーベヴォールに掛け合い、寄進の話を一時的に止める事です。そして、ノヴァリス嬢に報告し、善後策を授けていただきましょう。








ディートリンデ:それは、私が!







 残され星のものがたり 第192話 「フレスラウ事変 I」 終







「次は6月9日(金)――らしいです。

 それでは失礼します」

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