ECO家の一族 クローバーワールドの片隅に生きる、とある一族のお話。
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マリーエンバルト綺想 III

サン・スーシ館――


ヒルデ:ただいま。

ユスティ:お帰りなさいませ、お嬢様。先程までデジレ様がいらっしゃってましたよ。


ヒルデ:ふむ。


ユスティ:お嬢様をお待ちになって、お昼過ぎまで。


ヒルデ:何か大事な用でもあったのですか。


ユスティ:デジレ様にご縁談が持ち上がっているそうです。その事で、お嬢様にご相談を、と。


ヒルデ:縁談……? デジレに?


ユスティ:はい。








ヒルデ:……そういえば前に会った時、しけたツラをしていたような気がしますね。


ユスティ:はい。


ヒルデ:…………。


ユスティ:…………。


ヒルデ:……まあ、その話は後にしましょうか。








ユスティ:はい。いかがでしたか、マリーエンバルト領は。


ヒルデ:さすがにツァイスの流れを汲むワインでした。


ユスティ:まあ、それは。


ヒルデ:とても甘くて、私はユッファーよりも好きですね。


ユスティ:はい。


ヒルデ:マリーエンバルト領のワインですが――。


ユスティ:はい。








ヒルデ:ツァイス醸造所の手が入っているなら、そのままツァイス醸造所にやってしまおうか、と思ったんですがね。


ユスティ:……マリーエンバルト領を、ですか?


ヒルデ:ええ。ですが、断られましたよ。


ユスティ:そのほうがよろしいかと。


ヒルデ:うん?


ユスティ:いくら選帝侯御用達の生産者とはいっても、位階二位付だった者たちを下に置くのは、色々と難しいでしょう。


ヒルデ:うまくいかない、と思いますか?


ユスティ:はい。


ヒルデ:ふむ……。


ユスティ:…………。


ヒルデ:――時に、デジレの話ですが。


ユスティ:はい。


ヒルデ:アウエは、どうなのです。私がデジレに肩入れするとして、あの男は迷惑と感じないのでしょうか。


ユスティ:それは、お嬢様からの紹介があった時点で覚悟を決めているかと。


ヒルデ:そんな心持ちで相手をされているのなら、デジレが哀れですよ。








ユスティ:申し訳ございません。訂正いたします。今は子供と大人です。けれど、いずれ女と男になるでしょう。








ヒルデ:……そういう事に関しては、私の何倍もあなたの目は確かでしょう。わかりました。












…………。


…………。


…………。












「青濤」館――


アストリット:あ、お嬢様。いらっしゃいませ。


ヒルデ:不良娘はどこです?


アストリット:不良……? あ、あの、デジレ様の事、ですか……?


ヒルデ:そう。


アストリット:デジレ様でしたら、食堂で、準備を……。


ヒルデ:そんな事をデジレがやっているのですか。


アストリット:も、申し訳ありません。どうしても、とデジレ様がおっしゃるので……。


ヒルデ:いや。奇特な事だと思っているのですよ。――不良娘! 出てきなさい!









デジデリア:――誰が不良娘よ!


ヒルデ:あなたですよ。カジラギ家に行ったら、もう何日も帰っていない、と。


デジデリア:…………。


ヒルデ:ここにいるのはわかっているが、無理に連れ戻せば私に喧嘩を売る事になる、と恐れていたようですね。


アウエ:お嬢様。いらっしゃいませ。いかがなさいまして?


ヒルデ:ああ、アウエ。あなたに新たな任を与えます。


アウエ:はい。それは、どのような……?


ヒルデ:その前に、デジレ。


デジデリア:何よ。








ヒルデ:あなたの縁談ですけど、私が壊してきましたから。


デジデリア:!


アウエ:!


ヒルデ:その代わり、デジレは私がもらう事になりました。


デジデリア:ちょ、ちょっと、なんの話をしてるのよ!?


ヒルデ:三星公との縁組ですから、カジラギ卿も承服してくれましたよ。さて、デジレ――。


デジデリア:な、何。


ヒルデ:我が名代として旧マリーエンバルト領を統治せよ。


デジデリア:!


ヒルデ:アウエ。「黄金領」代官と兼務して旧マリーエンバルト領の経営に当たる事。


アウエ:は、はっ。


ヒルデ:以上。……アウエ、しっかりと補佐してやりなさい。


アウエ:承知いたしました。


アストリット:デジレ様、おめでとうございます!


デジデリア:う、うん……。急な事で、なんて言ったらいいのやら……。


ヒルデ:そうそう。デジレ。


デジデリア:な、何?








ヒルデ:あなたは私の妹として迎えました。私は姉ですよ。姉。敬いなさい。敬うのですよ。いいですね。







 残され星のものがたり 第191話 「マリーエンバルト綺想 III」 終







「次回は6月5日(月)に更新予定よ!

 じゃあね」

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